AWAZUKU HOUSE










AWAZUKU HOUSE


海谷の集合戸建て住宅 〜環境を貸す住宅〜

愛知県額田郡幸田町に建つ4つの賃貸集合戸建て住宅。

市街地から少し離れた、きれいな里山、お寺や田畑、カーブする小道や小川、生垣がつくる道の風景が印象的なエリアに建つ。

それらの場所性をどのように生活に結び付けられるかを考えた。

同時に不動産業者さんの話ではこのエリアの賃貸ストックは通常のアパートやマンションはもう飽和状態とのことだったので、

ここでは豊かな環境を活かしたゆとりある暮らしを貸せればと考えるようになり、

部屋を貸す→建物を貸す→土地付きで貸す→既存井戸利用、母屋の隣地畑も貸す→母屋の父母の農作業支援付きとなり考えが発展していき、最終的に人間関係を含めた「環境を貸す」に繋がった。

それぞれの棟はロフトを持っており、そのフロアの窓からは裏山が見えるようにしている。

敷地内の棟同士でロフト階の視線を邪魔せずviewが重ならないように、各棟の高さや位置や屋根傾き方向が決まっている。


モノの再利用と水路

今回は再利用しているものが4つある。石垣の石、既存小屋の柱梁材、生垣、古井戸である。

敷地地盤面をかさ上げした土留めとして敷地沿いに積んであった石垣は北東側に転落防止用に並べた。

敷地に建っていた古家の柱梁材は傷付けないように残しておき、外壁沿いのベンチ材や水路回りのベンチ材として再利用した。

敷地の周囲に巡るこの地域によく見られる「生垣」は,一旦隣の畑に移植しておき最後に敷地内に移し替えて再利用している。

移植された生垣は動線を調整しプライバシー確保にも役立っている。今では使われなくなっていた古井戸は水質検査をした上で、手漕ぎポンプを設置し、使用できるようにした。

近くを流れる小川に合わせて緩やかなカーブを描きながら古井戸の地下水を表出させ、それぞれの屋根から流れる雨水も集めて敷地内を回る「水路」によって排水されている。

「水路」は各棟の敷地の境界にもなっている。さらに有事の断水時の応急水にもなる。

施主が高校生まで過ごした母屋の2階からは太平洋の海が見える。

敷地内にできた水路の水面が海風に揺らいでいる。